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建物明け渡し請求コラム

建物の老朽化に基づく明渡請求は可能か

【設例】

私は,父が亡くなった時の遺産分割協議で,1棟のアパートを相続しました。

 

私の祖父が建て,築50年余り経過している木造の2階建アパートです。6室あるうち3室は空室の状態です。アパートの老朽化が進んでいることもあり,新しい入居者が見込めず,3室は長期間,空室の状態です。

 

私は,このアパートを取り壊して,新築アパートを建築することを計画しています。現在アパートに居住する3人の賃借人に対しては,更新拒絶または解約申入れをすることを検討しています。

 

建物の老朽化を理由として,更新拒絶または解約申入れを行った場合,認めてもらえるのでしょうか。

 

 

【回答】

賃貸人が更新拒絶または解約申入れ等により普通賃貸借契約を終了させたい場合には,正当事由があることが必要です(借地借家法28条)。

 

そして,正当事由の有無は,①賃貸人の建物使用の必要性,②賃借人の建物使用の必要性,③建物の賃貸借に関する従前の経過,④建物の利用状況,⑤建物の現状,⑥立退料等の事情を総合的に考慮して判断されます(借地借家法28条)。

 

これらの考慮要素の中でも,①賃貸人の建物使用の必要性,②賃借人の建物使用の必要性が,主要な考慮要素として重視され,③建物の賃貸借に関する従前の経過,④建物の利用状況,⑤建物の現状,⑥立退料等は補充的な要素になります。各要素にも軽重があります。

 

建物の老朽化という事情は,上記「⑤建物の現状」として,正当事由の有無の判断の一考慮要素となります。

 

しかし,正当事由の有無は,上記の考慮要素の総合的判断になるため,建物の老朽化という事情のみで,正当事由が必ず認められるというわけではありません。

 

続いて,建物の老朽化という事情が,正当事由の有無の判断において,どのように考慮されるのかを見てみましょう。

 

建物の老朽化が進み,耐震性が欠如しているケースを想定してみます。

 

賃貸人には,建物の使用・収益に必要な修繕をする義務があり(民法606条1項),耐震性の欠如という事情がある場合には,賃貸人には耐震補強工事等の修繕義務が生じ得ます。

 

建物の耐震補強工事等の修繕工事が可能であれば,原則として,賃貸人は修繕工事を行う義務を負うことになり,正当事由が否定される方向に働きます。

 

反対に,耐震補強工事等の修繕工事が可能ではないとき,または困難なときは,正当事由が肯定される方向に働きます。

 

修繕工事が可能か否かの判断においては,経済的観点が加味されます。

 

たとえば,修繕工事を行うには膨大な費用がかかり,新築建物を建築する費用までをも上回る場合もあるでしょう。そのような場合にまで,賃貸人に対して修繕義務を負わせることになると,経済的観点から著しく不合理な結論になります。

 

裁判例において,築45年余が経過した木造2階建て家屋で,外壁やトタンや基礎の土台が腐食し始めており,地震などの災害時には建物倒壊のおそれが強いと認定された建物について,今後,賃貸人が賃料収入を得るためには,新築を建設するに等しい程度の費用をかける必要があり,建物を維持管理するにも多額の費用を要するという事情がある場合,建物の老朽化の事情が正当事由を認める積極要因として考慮されています(東京地方裁判所平成17年3月25日判決)。

 

そして,この裁判例では,賃貸人が生計維持のために,建物を解体して,敷地を利用する必要性が高く(上記①の事情),また,賃借人の建物使用の必要性が低い等の事情(上記②の事情)も併せ,正当事由があると判断されました。

 

本件でも,「⑤建物の現状」に関して,アパートの修繕工事が可能か否かについて,経済的観点を加味して考え,工事が可能でないまたは困難な場合には,正当事由が認められる方向に働きます。

 

ただし,上述のとおり,建物の老朽化という事情のみで,正当事由が必ず認められるというわけではありません。本件でも,上記のその他の考慮要素も総合的に考慮し,正当事由の有無が判断されることになります。

 

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