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建物明け渡し請求コラム

「騒音に対処しろ」というクレームを受けたら

【相談】マンションを賃貸していますが,1階の入居者から,地下1階に入居するスナックから出るカラオケの騒音がうるさくて眠れないというクレームを受けました。スナックのオーナーにはクレームが入ったことを伝えましたが,注意する以上に何か対処しなければならないのでしょうか。

 

【回答】マンションのオーナー様は,スナックの騒音による他の入居者の被害を回避するために,場合によってはスナックのオーナーとの賃貸借契約を解除するなど適切な措置を講じる必要があり,これを怠ると他の入居者から慰謝料などの損害賠償を請求されてしまう可能性があります。

 

騒音に関する規制には,環境基本法,騒音規制法,振動規制法,条例による規制などがあります(ただし,飲食店の騒音については,騒音規制法と振動規制法は適用されません。)。

環境基本法は,政府が,騒音などの環境上の条件について,「人の健康を保護し,及び生活環境を保全する上で維持されることが望ましい基準を定めるもの」としています(環境基本法16条1項)。そして,環境省の告示で「騒音に係る環境基準」が定められ,たとえば主として住居の用に供される地域の類型Bでは,原則として昼間が55デシベル以下,夜間が45デシベル以下と定められています。

また,都道府県は,それぞれ独自に環境に関する条例を定めています。たとえば,東京都は,「都民の健康と安全を確保する環境に関する条例」(以下「環境保護条例」といいます。)を定めています。その規制の基準は,第一種及び第二種中高層住居専用地域,第一種及び第二種住居地域では,原則として午前8時から午後7時までは50デシベル,午後7時から翌午前8時までは45デシベルが上限と定められています。

上記の「騒音に係る環境基準」に違反した場合について法律上の罰則や行政上の措置は定められていませんが,都道府県が定める条例の基準に違反した場合には,違反者に対し,都道府県知事等による改善勧告が出されたり,またこれに従わない場合には停止命令や業務停止命令が行われる可能性があります。

騒音によって被害を受けた場合,被害者は,人格権を侵害されたとして,加害者に対し,不法行為(民法709条)に基づく損害賠償を請求できる場合があります。

もっとも,騒音は,人の生活において日常的に発生するものですから,不法行為となるのは,受忍限度を超える程度に至っている騒音に限られると考えられています。受忍限度とは,人が社会共同生活を営むうえで通常であれば当然に受け容れなければならないと考えられる限度のことをいいます。

では,環境基本法や環境保護条例が定める上限を超える騒音が発生した場合に,そのような騒音を出す行為は,受忍限度を超えて不法行為となるのでしょうか。

裁判所は,法令上の制限は,受忍限度を超えるかどうかを判断するに際しての考慮要素の一つとなると判断していますが,これに違反していることのみによって不法行為と断定することはできず,騒音の程度や,侵害された利益の内容,地域環境,騒音が発生している期間や状況,被害の防止に関する措置がとられたかどうかやその内容等,様々な事情を総合的に考慮して判断されるべきであるとしています(最高裁平成6年3月24日判決)。

本件においても,スナックを営業しているテナントが出しているカラオケなどの騒音の程度が,環境基本法や環境保護条例の規制基準を超えていても,直ちに受忍限度を超えた不法行為になるといえるわけではありません。

しかし,マンションのオーナー様は,スナックが法令上の規制基準を超える態様でマンションを使用し,他の住民に相当程度の迷惑が及んでおり,これを注意しても規制違反が是正されずに違法状態が継続するなど,受忍限度を超える場合には,賃借物件の用法義務違反を理由に賃貸借契約を解除できる場合があります(横浜地裁平成元年10月27日判決)。

このように,マンションのオーナー様は,入居者の被害を回避できる立場にあるといえることから,賃貸借契約上,賃借人が賃貸物件を使用することが安全に行われるように配慮する信義則上の義務があると解されます。

そして,賃貸人が賃借人に対するこの信義則上の義務を怠ると,賃借人に対する契約違反があると主張されて,損害賠償責任を負うことになる可能性があります。

実際に,裁判所は,ビルのテナントとして入居していたディスコの騒音によって他の賃借人が不眠などの被害を被った事案において,ビルの賃貸人に対し,賃貸借契約上の信義則上の義務違反を理由に慰謝料の支払いを命じたことがあります(東京地裁平成25年4月17日判決)。

そこで,マンションのオーナー様は,必要な調査を行った結果(地方自治体が騒音計の貸出等を行っている場合があります。),行政上の基準を超過するなどの騒音が認められる場合には,スナックに対して注意や警告を行い,場合によっては契約解除を含めた措置を講じる必要があります(法的に契約解除が認められるかどうかは慎重な判断が必要になるため,弁護士へご相談いただくのが安心です。)。

 

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