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建物明け渡し請求コラム

入居者が音信不通になった場合の対応

1 入居者と全く連絡がつかない!

入居者の方が音信不通となり,行方が分からなくなってしまった場合,賃貸人はどうすればよいでしょうか。行方の知れない入居者から賃料が回収できるわけでもないため,賃貸人としては早く賃貸借契約を解除し,物件を別の方に貸して賃料を得たいと考えるでしょう。

 

しかし,入居者の行方が分からないからといって,契約が解除されたことにして勝手に残置物を処分したり,新たな入居者を入れたりすることはできません。賃貸借契約を解除し,物件の明渡しを受けるための法的手続を経る必要があります。

 

 

2 入居者が音信不通の場合の賃貸借契約解除

入居者が音信不通となった場合,通常は賃料が支払われないことになりますので,賃料不払いを原因として賃貸借契約を解除することになります。しかし,入居者が音信不通の場合,すんなりと解除ができないという問題があります。

 

賃料不払いを原因として賃貸借契約を解除する場合,まず入居者に未払賃料の支払いを求め(これを「催告」といいます。),相当期間がたっても賃料が支払われない場合は,契約を解除することを入居者に通知しなければなりません(これを「解除の意思表示」といいます)。催告と解除の意思表示は分けて行うのではなく,「未払いの賃料を○日までに支払わない場合は契約を解除する」というように1通の通知で行うこともできます。

 

入居者の行方が分かっている場合は,入居者に対して催告も解除の意思表示もすることができますが,入居者が音信不通になっている場合はそうも行きません。意思表示は相手方に到達したときから効果が生ずるとされています(民法第97条第1項)ので,入居者が音信不通の場合,通常の方法では解除ができないのです。

 

このような場合,公示による意思表示(民法第98条)という方法により,解除の意思表示をするということが考えられます。これは,意思表示の相手方が不在の場合に,裁判所の掲示場に通知を掲示し,その旨を官報に掲載することにより,一定期間の経過をもって相手方に意思表示が到達したとみなすことができる制度です。

 

しかし,この制度を使って賃貸借契約を解除することができたとしても,音信不通の入居者が自主的に退去してくれるわけではなく,建物明渡しを求める訴訟を提起する必要があります。そして,後述のように,訴状の中で賃貸借契約解除の意思表示をすることも可能であるため,入居者が音信不通の場合には,公示による意思表示の制度を使って賃貸借契約を解除するよりも,すぐに建物明渡請求訴訟を提起し,その中で賃貸借契約解除の意思表示をする方が合理的です。

 

 

3 建物明渡請求訴訟の提起

入居者を被告として建物明渡請求訴訟を提起する場合も,入居者に対して訴状を送達する必要があります。しかし,入居者は音信不通なわけですから,直接送達することもできません。このようなとき,公示送達(民事訴訟法第110条~第113条)という方法により訴状の送達をすることができます。公示送達とは,被告の行方が分からないときに,裁判所書記官が訴状をいつでも交付すべき旨を裁判所の掲示場に掲示し,2週間を経過することで訴状を直接交付したときと同じ効力が生ずる送達方法です。公示送達をするためには,原告が被告の所在を調査しても,被告の居所や就業先等の送達すべき場所が分からない旨の報告書を裁判所に提出する必要があります。

 

そして,訴状の中に解除の意思表示の記載をしておくことで,公示送達により賃貸借契約解除の意思表示が相手方に到達したとみなされます(民事訴訟法第113条)。

 

公示送達の場合,被告となった入居者は自分に建物明渡請求訴訟が提起されたことに気づかないため,答弁書も提出せず,第1回口頭弁論期日にも出頭しないのが通常です。被告が第1回期日に出頭しない場合,通常は被告が原告の請求を認めたものとみなされます。これを擬制自白(民事訴訟法第159条第3項,同条第1項)といいますが,公示送達の場合には擬制自白が適用されません(民事訴訟法第159条第3項ただし書き)。そのため,被告が出頭しないことが予想できたとしても,賃料不払いによる賃貸借契約解除の有効性を立証しなければならないことに注意が必要です。

 

もっとも,証拠があれば通常は1回で口頭弁論が終結し,被告である入居者に物件の明け渡しを命ずる判決が出されることになります。

 

 

4 建物明渡しの強制執行

建物明渡請求訴訟で請求認容判決を得ても,音信不通の入居者が自主的に明け渡すことは期待できませんから,判決に基づいて明渡しの強制執行を行うことになります。

 

 

5 おわりに

入居者の方が音信不通になり行方が分からなくなっても,上記のような方法で賃貸借契約を解除し,物件の明渡しを受けることができます。この手続を行うには,公示送達のために入居者の所在等の調査をしなければなりませんし,訴状には賃料不払いを原因として賃貸借契約を解除し,建物の明渡しを求めることの要件を不足なく記載する必要があります。少しでも手続に不安がある賃貸人の方は,不動産の明渡しに強い弁護士に相談するとよいでしょう。

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