建物明け渡し請求コラム
司法書士ではなく,弁護士に依頼するメリットとは?
1 建物明渡請求を誰に依頼するか
建物の明渡請求をしたいとき,専門家への依頼を検討する方は多いと思います。その際,弁護士に依頼すべきか司法書士に依頼すべきか迷われる方もいらっしゃるでしょう。
ここでは,建物明渡請求を弁護士に依頼するメリットをご紹介していきます。
2 弁護士と司法書士の業務範囲の違い
弁護士は,訴訟事件その他の一般の法律事務を行うことができ(弁護士法第3条第1項),法的紛争の代理業務を行うことができますが,司法書士は原則として法的紛争の代理業務を行うことはできません。しかし,法務大臣の認定を受けた司法書士は,簡易裁判所において取り扱うことができる民事事件(訴訟の目的となる物の価額が140万円を超えない請求事件)等についてのみ代理業務を行うことができます(司法書士法第3条第1項第6号,同条第2項)。
3 弁護士に依頼するメリット
(1)建物の価格にかかわらず,依頼することができる
上記のように,司法書士は訴訟の目的となる物の価格が140万円を越えない請求事件についてしか代理人となることはできませんが,弁護士はそのような制限なく依頼を受けることができます。
建物明渡請求において訴訟の目的となる物の価格は,建物の評価額の2分の1とされており,建物の価格は通常固定資産税評価額にて判断します。そのため,司法書士は,建物の固定資産税評価額が280万円を越えないものについてしか依頼を受けることができません。
弁護士は,建物の価格にかかわらず,建物明渡請求のご依頼を受けることができます。
(2)控訴審,上告審まで一貫して依頼可能
わが国の裁判制度では三審制が採られており,判決に不服があると上級の裁判所に控訴・上告をすることができることは皆さんご存知のとおりでしょう。
第1審の裁判所が地方裁判所の場合,控訴すると高等裁判所へ移行し,そこからまた上告すると最高裁判所へ移行します。簡易裁判所が第1審裁判所であっても,控訴すると地方裁判所へ移行し,そこからまた上告すると高等裁判所へ移行します。
司法書士は,簡易裁判所における訴訟代理権しか有していませんので,当初司法書士に依頼していても,訴訟手続が控訴審や上告審に移行すると別の弁護士を探さなければならなくなります。
しかし,弁護士は,どの裁判所の事件でも訴訟代理権を有していますので,第1審手続から控訴審,上告審に至るまで,一貫してご依頼者様の訴訟代理人となることが可能です。
(3)強制執行の代理も依頼可能
建物明渡請求訴訟を提起して,請求が認められる判決を得ても,建物を占拠している者が任意に建物を明渡さない場合,判決に基づいて強制執行を行う必要があります。
強制執行の申立て代理は,弁護士は行うことができますが,司法書士は行うことができません(司法書士法第3条第1項)。弁護士であれば,建物明渡請求訴訟から強制執行まで,代理人として一貫して手続に関与することが可能です。
4 おわりに
このように,弁護士は建物の価格にかかわらず依頼を受けることができ,訴訟から強制執行に至る手続について,全てご依頼者様を代理して手続に関与することができますので,後の手続も見据えた手厚いサポートが可能です。
建物明渡請求の専門家への依頼を検討する際は,弁護士に依頼することによる上記のメリットを把握した上でご検討いただければと思います。