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建物明け渡し請求コラム

定期借家契約の有効性について

1 定期借家契約とは

 

定期借家契約(借地借家法条38条)とは,更新がなく,期間の満了により契約が終了する賃貸借契約です。

日本では賃借人の保護が強く,通常の建物賃貸借契約であれば,期間が満了しても正当事由がなければ賃貸借契約を終了させることができません(借地借家法28条)。

しかし,定期借家契約であれば,正当事由がなくとも期間の満了により賃貸借契約を終了させることが出来ます。なお,賃貸人と賃借人の双方が望めば,再度賃貸借契約を締結し直すことも可能です。

 

2 定期借家契約の要件

 

定期借家契約を締結する場合は,賃借人保護のため,通常の建物賃貸借契約とは異なる要件が課されています。

まず,定期借家契約を締結するには,口頭での契約ではたりず,書面によって契約を締結する必要があります(借地借家法38条1項)。

また,定期借家契約を締結しようとするとき,賃貸人は,あらかじめ,賃借人に対し,賃貸借契約に更新がなく,期間の満了によって終了することを記載した書面を交付したうえで,その旨説明しなければいけません(借地借家法38条2項)。そして,この事前説明書は,賃借人が当該賃貸借契約に契約の更新がなく,期間の満了により終了することを認識しているかどうかに関係なく必ず交付しなければならず,また,契約書とは別個独立の書面である必要があります。

この点について,最高裁判所は以下のように判示しています(最判平成24年9月23日民集66巻9号3263頁)。

「借地借家法38条1項の規定に加えて同条2項の規定が置かれた趣旨は,定期建物賃貸借に係る契約の締結に先立って,賃借人になろうとする者に対し,定期建物賃貸借は契約の更新がなく期間の満了により終了することを理解させ,当該契約を締結するか否かの意思決定のために十分な情報を提供することのみならず,説明においても更に書面の交付を要求することで契約の更新の有無に関する紛争の発生を未然に防止することにあるものと解される。

   以上のような法38条の規定の構造及び趣旨に照らすと,同条2項は,定期建物賃貸借に係る契約の締結に先立って,賃貸人において,契約書とは別個に,定期建物賃貸借は契約の更新がなく,期間の満了により終了することについて記載した書面を交付した上,その旨を説明すべきものとしたことが明らかである。そして,紛争の発生を未然に防止しようとする同項の趣旨を考慮すると,上記書面の交付を要するか否かについては,当該契約の締結に至る経緯,当該契約の内容についての賃借人の認識の有無及び程度等といった個別具体的事情を考慮することなく,形式的,画一的に取り扱うのが相当である。

   したがって,法38条2項所定の書面は,賃借人が,当該契約に係る賃貸借は契約の更新がなく,期間の満了により終了すると認識しているか否かにかかわらず,契約書とは別個独立の書面であることを要するというべきである。」

上記要件を満たさない契約は,更新がないという部分,つまり,定期借家であるとの部分のみが無効となり,更新のある通常の賃貸借契約として有効となります。(借地借家法38条3項)。

 

3 重要事項説明書との関係

 

賃貸借契約締結の際に交付される書面として,宅地建物取引業法上の重要事項説明書(宅地建物取引業法35条)があります。事前説明書は賃貸人が賃借人に交付すべきもの,重要事項説明書は宅地建物取引士が賃借人に交付すべきものであって,その役割も異なる書面ですが,これまで重要事項説明書が事前説明書を兼ねることができるかが明確ではありませんでした。

この点につき,近時,国土交通省は,次に掲げる事項を記載した重要事項説明書を交付し,賃貸人から代理権を授与された宅地建物取引士が重要事項説明を行うことで,事前説明書の交付及び事前説明を兼ねることが可能だとの見解を明らかにしました。

①本件賃貸借については,借地借家法38条1項の規定に基づく定期借家契約であり,契約の更新がなく,期間の満了により終了すること

②重要事項説明書の交付をもって,借地借家法38条2項の規定に基づく事前説明に係る書面の交付を兼ねること

③賃貸人から代理権を授与された宅地建物取引士が行う重要事項説明は,借地借家法38条2項の規定に基づき,賃貸人が行う事前説明を兼ねること

 

4 おわりに

 

定期借家契約を締結するときに事前説明書の交付が欠けてしまうと,通常の賃貸借契約となってしまい,正当事由がなければ賃貸借契約を終了させることができなくなってしまいます。

数年後に物件を自ら使う予定で,それまでの間の有効活用として物件を賃貸することもあると思いますが,定期借家契約が有効でないと入居者を立ち退かせるのが困難になります。

このように,定期借家契約が無効となると不動産活用の計画が狂ってしまうことになりかねませんので,定期借家契約を締結しようとする際は上記要件に不備がないかよく注意することが大切です。

 

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