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建物明け渡し請求コラム

強制執行を見据えた和解条項の定め方

【ご相談内容】

 

私は,8室あるアパート1棟を所有しています。

以前から家賃を滞納しがちであった1人の賃借人が,3か月も続けて家賃を滞納したことから,私は,未払家賃の支払いを求めるとともに,賃貸借契約を解除してアパートの明渡しを求める訴えを起こしました。

訴訟において,裁判官を交えて協議をした結果,一定の猶予期間を設けて,賃借人がアパートを明け渡し,未払家賃を分割で支払う内容で和解をすることになりました。

私は,その賃借人がこれまで何度も家賃を滞納してきたこと等から,その賃借人を全面的に信頼することができません。

その賃借人が和解条項に違反した場合,私はどのような対応を取ることができるのでしょうか。

また,その対応を見据えて,どのような内容の和解条項を定めておくべきでしょうか。

 

【回答内容】

 

裁判上で和解を行った場合,和解内容が記載された和解調書と呼ばれる書面が作成されます。

この和解調書には判決と同様の効力が認められています。

賃借人が和解調書に記載されている和解条項を守らない場合,賃貸人は,新たな裁判をすることなく,和解調書を債務名義(※)として強制執行をすることができます。

ただし,和解条項において,強制執行を見据えた適切な規定が置かれていることが必要です。

本件でも,和解条項において強制執行を見据えた適切な規定を置いておけば,強制執行手続きを取り,アパートの明渡しや未払賃料の回収を図ることが可能です。

本件で,強制執行を見据えて,どのような内容の和解条項を定めておくべきかについて,和解条項例にてご説明します。

なお,明渡しを求める強制執行手続きについては,「強制執行手続きについて」のコラムをご参照ください。

 

※債務名義とは,強制執行によって実現されることが予定される請求権の存在,範囲,債権者,債務者を表示した公の文書のことです。代表例として確定判決があります。強制執行をするには,この債務名義が必要です。

 

和解条項例

 

ご相談のケースのように,建物の明渡しと未払賃料の支払いに関して,裁判上の和解をする場合,強制執行手続きに進む可能性を踏まえて,次のような和解条項を規定しておくことが考えられます。

 

1.被告は,原告に対し,本件建物についての賃貸借契約が,令和〇年〇月〇日,被告の債務不履行による解除により終了したことを認める。

2.原告は,被告に対し,本件建物の明渡しを,令和〇年〇月〇日まで猶予する。

3.被告は,原告に対し,前項の期日限り本件建物を明け渡す。

4.被告は,原告に対し,令和〇年〇月〇日から令和〇年〇月〇日までの本件建物の未払賃料〇〇万円を,次のとおり分割して,〇〇銀行〇〇支店の〇〇名義の普通預金口座(口座番号〇〇)に振り込んで支払う。なお,振込手数料は被告の負担とする。

(1)令和〇年〇月末日限り〇万円

(2)令和〇年〇月末日限り〇万円

(3)令和〇年〇月末日限り〇万円

5.被告は,原告に対し,令和〇年〇月〇日から本件建物の明渡済みまで,賃料相当損害金として1か月〇万円の金員を,当月分につき前月末日までに前項の普通預金口座に振り込んで支払う。なお,振込手数料は被告の負担とする。

6.被告が前2項の支払いを1回でも怠ったときは,当然に第2項ないし第4項の各期限の利益を失う。

 

まず,明渡しに関して,合意解除する旨と明渡猶予期間を定めただけでは,給付(本件ではアパートを明け渡すという給付内容になります。)の合意を欠くことになるため,強制執行まですることができません。必ず,第3項のような給付を合意する条項が必要です。

また,実務上,「・・・合意解除し,令和〇年〇月〇日限り明け渡す」という規定を見かけることがありますが,解除から明渡しまでの期間が長期間であると,借地借家法の適用を受ける新たな賃貸借と解されるリスクが生じ得ます。

かかるリスクが生じないように,第2項のように,あくまでも明渡猶予期間であることを明確に記載することが必要です。

次に,未払家賃等に関して,第6項にあるとおり,分割金の支払いを怠った場合には期限の利益を喪失し,一括で支払う義務を負うことになる旨を規定しておきます。かかる規定により,期限の利益を喪失した時点で全残額について強制執行手続きを取ることが可能です。

細かい点ですが,賃貸借契約が解除によって終了した場合,終了前については賃料,終了後については賃料相当損害金となります。

 

最後に,和解調書は判決と同様の効力を持つことから,和解条項の内容については賃貸人に不利にならないように細心の注意を払う必要があります。

不安がある場合には,弁護士にご相談ください。

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