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建物明け渡し請求コラム

強制執行手続きについて

【設例】

私は商業用ビルを1棟所有していますが,人材派遣業を営むA株式会社がビルの一室にテナントとして入っていたところ,賃料の滞納が続いた挙げ句,フロアには誰もいなくなり,営業を停止してしまいました。

 

そこで,私は賃料支払義務の違反を理由として,裁判所に建物の明渡しを請求する裁判を起こしました。A株式会社の社長などは裁判所に現れず,裁判所には請求を認める判決を出してもらいました。

 

しかし,フロアには依然としてパソコンやデスク,椅子などの会社の備品がそのままとなっています。判決を出してもらったにもかかわらず,A株式会社が明け渡す気配がないのでどうすればよいのか,インターネットで調べてみたところ,どうやら建物明渡しの強制執行という手続きが必要となるようです。建物明渡しの強制執行とはどのような手続きなのでしょうか。

 

【回答】

建物の所在地を管轄する裁判所の執行官という職員に対し,建物明渡しの強制執行を申し立てることによって,強制的に建物の明渡しを実現する手続きです。

 

 

建物の明渡しを請求する裁判で,明渡しを認める判決が出たとしても,賃借人が自ら荷物等を建物から運び出して明け渡さなければ,建物の明渡しの強制執行という手続きが必要となります。

 

というのも,賃貸人が,賃借人の同意を得ずに荷物等を撤去することは,禁じられているからです(他人の住居・建造物に侵入したとして罪に問われたり,荷物等の処分により賃借人が損害を受けたとして,損害賠償請求を受ける可能性があります。)。

 

設例では,パソコン等がそのままの状態で残されており,これらの動産は経済的価値が相応に認められると考えられますから,勝手に処分すれば,ご相談者様は,A株式会社から損害賠償請求を受けるなど,損害を被る可能性があります。

 

そこで,建物の明渡しの強制執行という手続きを採る必要があります。具体的には,ご相談者様が取得した判決書を必要書類の一つとして(その他執行文,送達証明書等が必要となります。),ビルの所在地を管轄する裁判所の執行官という職員に対し,強制執行を申し立てることになります。

 

強制執行を申し立てると,東京地方裁判所本庁では,執行官面接と呼ばれる執行官との打合せが行われます(電話での打合せを実施するなど,各裁判所で運用は異なります。)。執行官面接では,①強制執行を行う日を公示する明渡し催告と呼ばれる手続きの日程調整や,②賃借人・物件の状況の確認,③執行補助業者(強制執行を行う日に,賃借人の荷物等を搬出・保管等する業者のことをいいます。)の選択,④警察の援助の要否(入居者が反社会的勢力だった場合等に検討が必要となります。)などの打合せが行われます。

 

設例では,パソコン等多くの備品が放置されたままとなっていますから,荷物の搬出等の作業が必要となるため,上記③の執行補助業者の選択が必要となります。裁判所の執行官室には,執行補助業者に指定された登録業者の名簿が備え付けてあり,執行補助業者の当てがない場合には,この名簿から選択することが適切です。

 

強制執行に要する弁護士報酬以外の費用の中で,最も大きな割合を占めるのが,執行補助業者に支払う料金になります。明渡しの催告のときに,執行補助業者に見積りを依頼するのが一般的ですが,たとえばファミリー型のマンションの場合で家具等が多い場合には,50万円以上を要することがあります。

 

設例では,A株式会社の事業所に放置されたパソコン等多くの備品を搬出する必要がありますから,その料金は相当高額となることが予想されます。見積りは,運搬用車両の台数や,作業員の人数,所要時間等の見込みにより算定されます。

明渡しの催告の当日は,執行官が明渡しの期限と,実際に強制執行を行う日(断行日といいます。)を,公示書と呼ばれる書面に記載し,建物内に貼り付けて公示します。

 

断行日には,放置された物品が段ボール等で梱包され,保管場所で一定期間保管された後に,廃棄処分又は売却処分されることになります。

 

ただし,保管期間の経過前に放置された物品を売却処分することはできないため,保管期間中に賃借人が受け取りに来た場合には,引き渡す必要があります。

 

設例でも,A株式会社にとって非常に重要なデータが記録されていると思われるパソコンなど,事業に必須の備品が放置されていますから,A株式会社の代表取締役等の役職員が,明渡し催告後,断行日の前日までに,パソコン等の備品をすべて搬出して事業所の鍵を引き渡し,自主的に明け渡す可能性があります。この場合には,強制執行の申立てを取り下げることができますし,断行日の数日前に自主的な明渡しを受け,放置された物品がない場合には,執行補助業者との契約をキャンセルすることができます。

 

なお,放置された物品の保管場所は,強制執行の申立人の費用で準備する必要があり(ただし,賃貸物件内でそのまま申立人が保管するという運用もあります。),また保管期間経過後の処分費用についても,申立人の負担となります。

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