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建物明け渡し請求コラム

賃借人が荷物を残して夜逃げしてしまった場合

【設例】

私は,アパート経営を行っていますが,その一部屋の借主が家賃を3か月間も滞納したので,借主と保証人に対し請求書を送付したり,何度も電話をしましたが連絡が取れない状況が続きました。そこで,借主の緊急連絡先として指定されていた,ご実家に問い合わせたところ,借主は様々な支払いを滞納して夜逃げしてしまったようで,色々な請求書が実家にも届くので家族も困っているとのお話でした。

 

建物賃貸借契約書には,家賃を1か月でも滞納した場合には借主に連絡することなく契約を解除できると定められていますので,家賃を滞納して夜逃げした借主との契約は解除したことにして,部屋に残された借主の荷物を片付けてもよいのでしょうか。

 

【回答】

家賃が長期間滞納され,借主の方が行方不明であったとしても,建物の明渡しを認める裁判所の判決を得たうえで,強制執行という裁判所の職員による正式な手続を踏むことによって,部屋の明渡しを実現する必要があります。

 

ご相談者様によると,借主の方や保証人の方と連絡がつかない状況が長期間続いているということです。このような場合であっても,ご相談者様が,借主の方に無断で荷物を撤去して部屋を片付けることは,禁じられています。

 

借主の方に無断で部屋に入室することは,住居侵入罪(刑法第130条前段)に問われる可能性がありますし,荷物を勝手に処分すれば,器物損壊罪(刑法261条)に問われたり,不法行為(民法第709条)が成立して損害賠償責任を負う可能性があります。

 

実際に,裁判所は,賃借物件から家具等をそのまま放置して転居したうえに半年間も賃料が滞納されたことから,賃貸人が賃貸物件の鍵を破壊して物件内を調査し,家具等を処分したという事案において,賃貸人の不法行為責任を認め,損害賠償を命じたことがあります(大阪高裁昭和62年10月22日判決)。

 

そこで,ご相談者様としては,まず(1)借主の方との建物賃貸借契約を解除して部屋の明渡しを認める裁判所の判決を得たうえで,(2)その判決に基づき,建物の明渡しの強制執行という手続を採る必要があります。

 

建物の明渡しを認める裁判所の判決を得るためには,原則として,賃借人若しくは保証人の住所地,又は建物の所在地を管轄する裁判所で手続を採る必要があります。

 

設例では,ご相談者様が部屋の明渡しを求める裁判を起こしたとしても,借主の方は行方不明の状態ですから,裁判所に来ない可能性が高いと思われます(なお,借主の方が行方不明の場合は,所在不明であることを裁判所に報告し,公示送達という方法(裁判を起こされたことを裁判所の掲示場で告知する手続)によって裁判を進めることになります。)。そのような場合には,ご相談者様の主張(家賃滞納による建物賃貸借契約の解除及び建物の明渡し請求)がそのまま認められる判決(欠席判決と呼ばれます。)が出されます。そして,この判決書を使用して,強制執行という手続を,申し立てることになります。

 

強制執行の申立てには,この判決書に加えて,判決が言い渡された裁判所の書記官という職員に「執行文」という文書を付与してもらう必要があります。また,判決が借主の方に送付されたことを証明する「送達証明書」という書類も必要となります。

 

これら(1)判決書,(2)執行文,(3)送達証明書を必要書類として,建物の所在地を管轄する裁判所の執行官という裁判所の職員に対して建物明渡しの強制執行を申し立てます。申立てを受けた執行官は,賃貸人と打合せを行い,強制執行を行う日を公示する「明渡しの催告」と呼ばれる手続を行う日付を決定します。

 

明渡しの催告の当日は,執行官,立会人,執行補助者(強制執行を行う日に,賃借人の家財道具や荷物を搬出して保管する業者のことをいいます。),鍵技術者(建物の合鍵がない場合に必要となります。)が建物に出向き,建物の状況を確認して,明渡しの期限と,実際に強制執行を行う日(断行日といいます。)を,公示書と呼ばれる書面に記載し,建物内に貼り付けて公示します。

 

そして,断行日には,明渡しの催告と同様に執行官らが建物に出向き,建物内の残置物の搬出を行い(建物内に賃借人が居座る場合には,賃借人の排除も行われます。),建物の明渡しが完了します。建物の明渡しの完了までには,強制執行の申立てから,約2か月程度を要します。

 

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