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建物明け渡し請求コラム

明け渡し訴訟の手順

 

1 交渉では賃借人が物件を明け渡さないとき

 

賃料を滞納する賃借人や物件を勝手に転貸した賃借人に,物件から出ていってもらいたい場合,まずは賃借人が自ら物件を立ち退いてくれるよう交渉することから始めるでしょう。しかし,交渉しても立ち退きの話がまとまらない場合は,いよいよ物件の明渡請求訴訟を提起していくことになります。

 

2 訴訟提起の準備

 

(1)被告の検討

 

訴訟を提起するにあたっては,まず,誰を被告として訴訟を提起するかを検討します。通常は賃借人が被告となりますが,賃借人が亡くなっている場合は相続人を調査して相続人を被告とする必要があります。また,物件が転貸されてしまっている場合は,賃借人だけではなく,実際に入居している転借人も被告とする必要があります。

 

(2)訴額・手数料の確認

 

続いて,訴訟提起のためには裁判所に手数料を支払わなければなりません。この手数料は訴訟物の価格(訴額)によって定まります。訴額と手数料の算定方法は訴訟の類型によって様々であり,具体的な手数料額の算定方法は民事訴訟費用等に関する法律で定められています。例えば,建物の賃貸借契約を解除して明渡請求をする場合,訴額は建物の固定資産税評価額の2分の1となります。

そして,訴額が分かれば裁判所が公表している手数料額早見表で簡単に手数料額が分かります(http://www.courts.go.jp/vcms_lf/315004.pdf)。

なお,建物明渡請求と同時に未払賃料等の支払いも請求する場合は,建物明渡請求の訴額と未払賃料請求の訴額(賃料の請求の場合の訴額はその請求額となります)を合わせた額がその訴訟の訴額となります(民事訴訟法9条1項)。

この手数料は,手数料額分の収入印紙を訴状に貼付する方法で支払います。

 

(3)管轄の検討

 

訴訟提起する場合は管轄の裁判所に訴訟を提起しなければいけません。まず,どの地域の裁判所に訴訟を提起すればよいかについて,原則として被告の住所地を管轄する裁判所がその事件の管轄裁判所となります(民事訴訟法4条1項)。不動産に関する訴訟の場合は,その不動産の所在地を管轄する裁判所も管轄裁判所となります(民事訴訟法5条12号)。賃貸借契約を解除して建物の明渡しを請求する場合は,通常は被告の住所地と物件の所在地は一致することが多いでしょう。

また,合わせて未払賃料の請求もする場合は,原則として原告の住所地を管轄する裁判所もその事件の管轄裁判所となります(民事訴訟法5条1号,民法484条)。

建物明渡請求と未払賃料請求を一つの訴訟で行う場合は,上記の管轄裁判所のうち一つ選んで訴訟を提起することができます(民事訴訟法7条)。

なお,賃貸借契約で管轄裁判所を定めている場合は,契約で定めた裁判所が管轄裁判所となります。

続いて, 第1審の訴訟は地方裁判所又は簡易裁判所に訴訟を提起することになりますが,このどちらに訴訟を提起すべきかについては,上記(2)で算出した訴額の金額によって決まります。原則として,訴額が140万円を超えない場合は簡易裁判所,140万円を超える場合は地方裁判所が管轄となります(裁判所法24条1号,同法33条1項1号)。もっとも,不動産に関する訴訟は,訴額にかかわらず地方裁判所も管轄となりますので(同法241号),訴額が140万円を超えない場合は地方裁判所と簡易裁判所のどちらかを選んで訴訟提起することができます。

 

(4)必要資料の収集

 

建物明渡請求訴訟の場合,建物の登記事項証明書や訴額の算定のため固定資産税評価証明書が必要となります。また,当事者が法人である場合は,その法人の代表事項証明書も提出する必要があります。これらは,通常3か月以内に発行された原本の提出が求められます。

そして,訴訟を提起する側の主張を裏付ける証拠も用意しなければなりません。どのような証拠が必要かは主張内容により様々ですが,例えば賃料不払の場合,賃貸借契約書等が必要となります。

 

(5)予納郵券

 

予納郵券とは,裁判所にあらかじめ納めなければならない郵便切手のことです。裁判所はこれを訴状の送達等に使用します。訴訟を提起する場合,手数料とは別に,この予納郵券も裁判所に納めなければなりません。予納郵券の金額やその内訳は裁判所によって異なりますので,訴訟提起予定の裁判所にあらかじめ確認する必要があります。

 

3 訴状の作成

 

(1)請求の趣旨

 

訴状には,「請求の趣旨」と「請求の原因」を記載しなければいけません。

「請求の趣旨」とは,原告が求める判決内容のことです。請求の趣旨では,法的性質や理由付けは記載しないのが実務上の扱いですので,建物の明渡しを求める旨や金員の支払いを求める旨を簡潔に記載します。例えば,以下のような記載です。

1 被告は,原告に対し,別紙物件目録記載の建物を明け渡せ

2 被告は,原告に対し,金○○円及びこれに対する訴状送達の日の翌日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え

3 訴訟費用は被告の負担とする

との判決並びに仮執行の宣言を求める。

建物明渡請求の場合,明渡しにかかる物件を特定しなければなりません。通常は訴状に別紙物件目録を添付し,登記事項証明書の記載に従って,所在地・家屋番号等を記載します。アパートの一室の明渡しを求める場合等物件の一部のみの明渡しを求めるときは,図面を添付し,明渡しを求める部分を囲むなどして特定します。

未払賃料等を請求する場合は,金額を特定して記載します。合わせて遅延損害金を請求する場合は,遅延損害金の始期と終期を特定し,遅延損害金の割合を記載します。上記記載例では,始期を「訴状送達の日の翌日」としていますが,賃料の支払期限以降であればいつを始期に設定しても構いません。

上記記載例では,判決だけでなく,仮執行の宣言(民事訴訟法259条1項)も求めています。判決が言い渡されてもその判決が確定するまでは強制執行手続に移行できないのが原則ですが,仮執行宣言がある場合は判決の確定をまたずに強制執行手続に移行することができます。

 

(2)請求の原因

 

「請求の原因」では,どのような法律関係に基づき,どのような理由によって請求するのかを明らかになるような記載をします。裁判所にどのような紛争であるかを的確に把握してもらうため,事実関係や訴訟提起に至った経緯等も踏まえて具体的に記載するのが望ましいです。

例えば,賃料不払いにより賃貸借契約を解除したという場合であれば,いつ誰とどのような内容の賃貸借契約を締結したか,その契約に基づいて物件を賃借人に引き渡したか,何月分の賃料が不払いになったのか,いつ,どのように賃借人に賃料を支払うよう催告をしたか,いつ,どのように賃貸借契約を解除したか等を記載していくことになります。

主張に不足があるとせっかく訴訟を提起しても請求が認められないことになりかねませんし,余計な記載が多いと裁判所が事案を適切に把握できない可能性もありますので,請求の原因は過不足なく記載すべきです。そのためには,ある事実関係について法的に原告と被告のどちらが主張すべきかについての理解が必要となりますので,不安があれば弁護士に相談すべきでしょう。

 

4 訴訟の進み方

 

(1)訴訟の提起・期日指定・送達

 

収入印紙を貼付した訴状とその写し,被告の人数分プラス1部の証拠の写し,添付資料の原本及び予納郵券を裁判所の窓口に持参するか,郵送する方法により訴訟を提起します。

訴訟が受け付けられると,まず訴状の審査がされ,不備があれば補正を求められます。補正が終わると,裁判所から第1回口頭弁論期日の候補日が提示され,期日を調整します。通常は,訴訟提起から1か月後ないし2か月後くらいに指定されることが多いです。

第1回口頭弁論期日が指定されると,被告に訴状が送達されます。

 

(2)第1回口頭弁論期日

 

口頭弁論期日は,裁判所の公開の法廷で行われ,提出書面を陳述したり,証拠を取り調べたりする手続です。第1回口頭弁論期日では,原告が訴状陳述し,被告が答弁書を提出していればそれを陳述します。被告はあらかじめ答弁書を提出していれば第1回期日は欠席することができます。

被告が出廷し,賃料の不払い等を争わない場合は,第1回で弁論が終わり,裁判所の判決を待つだけとなることもあります。

被告が欠席し,答弁書も提出していない場合は,被告は原告の主張を認めたとみなされるため(民事訴訟法159条1項,同条3項),この場合も同様に第1回で弁論が終わり判決を待つのみとなります。

 

(3)第2回期日以降

 

その後の訴訟の進行は,その事件の内容により様々です。主張に争いがなくとも,第1回期日で終了させずに和解交渉のための期日が開かれることもあります。

主張に争いがある場合は,お互いに主張立証を繰り返して行くことになります。通常1か月から1か月半に1回程度の頻度で裁判期日が開かれ,交代で主張書面を提出していきます。継続して口頭弁論期日が開かれる場合もありますが,弁論準備手続という手続に付されることも多いです(民事訴訟法168条)。これは,争点と証拠を整理するための手続で,公開の法廷ではなく非公開の小部屋で行われます。

お互いに主張立証をしながら,和解できる余地がある場合は和解交渉を行うこともあります。

和解交渉がまとまらず,お互いに主張と書面の証拠による立証を尽くせば,当事者尋問や証人尋問を行うこともあります。

そのうえで,原告被告双方が主張立証を尽くせば,弁論を終結し,裁判官に判決を出してもらうことになります。

 

5 訴訟の終わり方

 

訴訟は,判決,訴訟上の和解又は訴えの取下げにより終了します。

判決で終了する場合が一番分かりやすいと思います。これは,当事者双方から出された主張や証拠等をもとに,裁判所が原告の請求を認めるかどうかを判断するものです。請求を認める判決が出て,当事者双方が控訴せず,その判決が確定した場合は,その確定判決に基づいて強制執行手続に移行することができます。なお,上記のとおり,判決に仮執行宣言が付されていた場合は,判決の確定を待たずに強制執行手続を行うことが可能です。

訴訟中に和解交渉がまとまった場合は,訴訟上の和解が成立し,訴訟が終了します。和解調書は判決と同一の効力を持ちますので(民事訴訟法267条),被告が原告に建物を明け渡すことが記載されていれば,被告が和解に反して建物を明け渡さなくとも,この和解調書に基づいて強制執行手続に移行することができます。

また,訴訟は,訴えを取り下げることによっても終了させることができます(民事訴訟法261条1項)。訴訟を提起したところ,裁判までしたくないと思った被告が自ら建物を明け渡すこともあります。この場合,訴訟を継続する意味がないので,訴えを取り下げて終了させることができます。なお,被告が答弁書を提出するか第1回口頭弁論期日が開かれた後は,被告の同意がなければ訴えを取り下げることができません(同条2項)。

 

6 終わりに

 

 訴訟提起はご自分で行うことも可能ですが,法的知識が必要ですし,必要資料の収集や主張書面の作成等を行わなければなりません。賃借人へ明渡請求訴訟を検討している不動産オーナーの方は,弁護士にご依頼いただくことをお勧めいたします。

 

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