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建物明け渡し請求コラム

滞納額に差異が生じた場合の立証責任

1 滞納額の主張が異なる場合

賃料不払いがあった場合,物件の賃貸人と賃借人との間で,滞納額の主張に差異が生ずることがあります。例えば,賃貸人側は2か月分の滞納と主張するのに対し,賃借人側は1か月分の滞納であると主張したり,そもそも滞納はないと主張するような場合です。
その場合,賃貸人としては,賃借人側に支払った証拠を出せと言いたいと思います。他方,賃借人側からは,間違いなく払ったのだから賃貸人側でしっかり確認すべきだと抵抗してくることも考えられます。
このような場合,どちらが証拠を出すべきかについては,最終的に訴訟になった場合にどうなるかを考える必要があります。

 

2 立証責任の分配

訴訟では,当事者が主張した事実は,原則として立証されなければ裁判所における判決等の判断の基礎とすることができません(※1) 。
立証が必要な事実について,証拠が不十分である場合に最終的にどう判断されるのかについて立証責任という考え方があります。
立証責任とは,ある事実の存在を立証するのに十分な証拠がなく,裁判所にとってその事実が認められるのかどうかが明らかとならなかった場合,その事実はないものとして取り扱われてしまうことをいいます。簡単に言うと,証拠が足りない場合は立証責任を負う側に不利に判断されてしまうということです。
立証責任を負う側は証拠が足りないと自己に不利に判断されてしまうため,事実上自ら証拠を集めて十分に立証していかなければならないことになります。
基本的には,その事実の存在によって利益を受ける側が立証責任を負うと考えられています。

 

(※1)ただし,当事者双方がその事実の存在を認めている事実と,顕著な事実(裁判所においてその事実の存在が明白な事実をいいます。例えば,現時点で何年何月何日が到来している等の公知の事実や,裁判期日において当事者が時効の援用をした等の裁判所が訴訟手続上知ることのできた事実等です。)は立証する必要がありません(民事訴訟法179条)。

 

3 滞納額についての立証責任

賃料未払いの場合の滞納額は,支払われるべき賃料額のうち,どれだけの金額の賃料が支払われたのかによって明らかになります。
未払賃料の支払いを請求する場合,賃貸人側は,支払われるべき金額がいくらであるかについて立証責任を負います。正確には,賃貸借契約の締結,契約に基づく物件の明渡し,賃料額,賃料の支払時期及び支払時期が到来したことについて立証責任を負います。
賃料額や支払時期は賃貸借契約書によって立証できることが多いですし,賃借人が実際に物件に入居しているのであれば契約に基づいて物件を明け渡した事実についても通常問題になることはありません。また,賃料の支払時期は契約書において毎月何日限りと定められていることが多いところ,具体的な賃料支払日の到来は顕著な事実ですので別途証拠により立証する必要はありません。
そして,賃貸人側は,これ以上に「賃借人から賃料が支払われていない事実」について立証する必要はありません。

賃料を支払ったという事実は,その事実の存在によって賃料支払義務の消滅という賃借人側の利益をもたらしますので,賃借人側が立証責任を負います。
賃借人としては,自己に不利な判断がされないよう,賃料振込時の取引明細や領収書等の証拠を準備し,賃料を支払ったことを立証しなければなりません。賃料を支払ったという事実を立証できなければ,賃貸人側の主張する滞納額を基に裁判所の判断が下されることになります。

よって,滞納額の主張に差異が生じた場合は,賃貸人側で賃料の滞納があることを証明する必要はなく,賃借人側で賃料を支払って滞納がないことを証明しなければならないのです。

 

4 終わりに

以上のとおり,賃貸人としては,賃料が支払われていないことを立証する必要はありません。逆に,賃借人の側からすれば,賃料を支払ったことの証拠がなければ訴訟において不利に判断されてしまう可能性がありますので,賃料を支払ったことを証明する資料は保管しておくべきです。

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