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建物明け渡し請求コラム

財産開示制度とその法改正について

【質問内容】

 

私は,家賃を長期間滞納していたアパートの賃借人に対して訴訟を提起して,アパートの明渡しとともに未払家賃の支払いを命じる判決をもらいました。

賃借人はアパートの明渡しには応じたものの,家賃については全く支払いがない状況です。

強制執行の手続きを取らざるを得ないと考えていますが,その賃借人がどんな財産を持っているのか全く分からないため困っています。

債務者の財産に関する情報を得ることができる制度として,財産開示手続きという制度があると聞いたのですが,どのような手続きなのでしょうか。

 

【回答】

 

債務者の財産に対して強制執行を実施するには,裁判所に強制執行の申立てをする必要があります。

そして,強制執行の申立てをする際には,債務者のどの財産を対象とするのかを特定する必要があります。

債務者を裁判所に呼び出し,債務者に財産の情報を開示させる制度が財産開示手続きです。

 

財産開示手続きの申立てを行うことができるのは,①執行力のある債務名義(確定判決,和解調書,民事調停調書等)の正本を有する債権者,または,②一般の先取特権を有する債権者(※1)です。

 

※1 共益の費用,雇用関係,葬式の費用,日用品の供給によって生じた債権を有する者を指します(民法306条)。

 

ご相談者は,既に判決を取っておられるということですので,債務者の住所地を管轄する地方裁判所に財産開示手続きの申立てを行うことができます。

申立て後の流れは,以下のとおりになります。以下は,東京地方裁判所に申立てを行った場合の例になります。

 

  1. 財産開示の実施決定が出されます。実施決定から1週間以内に,債務者から不服申立てがなければ,実施決定が確定します。
  2. 実施決定の確定から1か月ほど後の日が財産開示期日と指定されます。財産開示期日の約10日前の日が債務者の財産目録提出期限と指定されます。債務者は,財産目録提出期限までに,自らの財産の情報を記載した財産目録を裁判所に提出しなければなりません。なお,申立人は,財産開示期日前においても,提出された財産目録を閲覧,謄写することができます。
  3. 申立人は,財産開示期日に出頭し,裁判所の許可を得て,債務者に対し質問することができます。ただし,根拠のない探索的な質問や債務者を困惑させる質問は許可されません。

以上が,申立て後の流れになります。

債務者が財産開示期日に出頭しなかった場合には,事前に財産目録の提出がなかった場合であっても,財産開示手続は終了します。

実際のところ,これまで,債務者が裁判所に出頭しない,あるいは虚偽の回答をした場合でも過料が課されるのみであったため,財産開示手続きは実効性に乏しいと考えられており,あまり利用されていませんでした(年間1000件前後です。)。

そこで,財産開示手続きをより使いやすく強力な制度にするため,以下のとおり,民事執行法の改正が行われました(※2)。

 

※2 改正民事執行法は,令和元年5月17日に公布され,令和2年4月1日から施行されます。ただし,登記所から債務者の不動産に関する情報を取得する手続きは,同公布日から,2年を超えない範囲内において政令で定める日から運用開始となります。

 

(1)申立権者の範囲が広がりました。

従前は,申立てをすることができる者は,確定判決等を有する債権者に限定されていました。
↓ 改正後
仮執行宣言付き判決を得た者(※3)や,公正証書(金銭債務を履行しなときは強制執行に服する旨の執行認諾文言が入っている必要があります。)により金銭の支払いを取り決めた者等も利用可能になりました。

 

※3 判決は控訴や上告などの不服申立てを受けると確定しません。仮執行宣言付判決とは,判決の中で,確定を待たずに強制執行を行うことを許す旨が宣言されているものをいいます。今回の改正で,この仮執行宣言付判決でも財産開示の申立てを行うことが可能になりました。

 

(2)債務者に対して刑事罰が課されることになりました。

従前は,債務者が財産開示期日に出頭しない,虚偽の陳述をした場合に対する罰則が過料(30万円以下)のみでした。
↓改正後

不出頭等の場合には,刑事罰(6か月以下の懲役又は50万円以下の罰金)を課すことができるようになりました。

 

(3)第三者からの情報取得手続きが新設されました。
従前は,債務者自身からの情報開示のみでした。

      ↓改正後

債務者以外の第三者からも債務者財産の情報(預貯金等,不動産,勤務先)を得られるようになります。

  1. 預貯金等については銀行等に対し,②不動産については登記所に対し,③勤務先については市町村や年金機構等に対し,強制執行の申立てに必要な情報の提供を命じてもらうことができます。

ただし,債務者の不動産と勤務先に関する情報取得手続きについては,それに先立って,債務者の財産開示手続きを実施する必要があります。

また,債務者の勤務先に関する情報取得手続きの申立てをすることができるのは,養育費等の債権や生命・身体の侵害による損害賠償請求権を有する債権者に限られます。

 

財産開示手続きの見直しにより,同手続きは,債権者にとってより使いやすく強力な制度となりました。

ご利用を考えておられる方は,ぜひご相談ください。

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